消費者金融などノンバンク・貸金業者が銀行や信用金庫と組み、個人ローンの損失リスクを肩代わりする「信用保証」を拡大しています。
銀行カードローンの融資急拡大を陰で支えているのはノンバンク・貸金業者なのです。
ノンバンク・貸金業者の事業モデルは個人に直接融資する過去の姿から一変しています。
下表は、
日本貸金業協会による貸金業関連資料より貸金業の金融機関の貸付に対する信用保証残高
と金融庁の貸金業関係資料集より貸金業の消費者向け貸付残高の推移です。
<貸金業 金融機関の貸付に対する信用保証残高推移>
単位:百万円 | 保証残高 | 内無担保貸付 | 消費者向貸付残高 |
H24.3月 | 4,359,852 | 3,195,032 | 7,831,500 |
H25.3月 | 4,684,074 | 3,590,773 | 6,779,000 |
H26.3月 | 5,051,702 | 4,005,381 | 6,228,700 |
H27.3月 | 5,630,603 | 4,589,866 | 6,014,800 |
H28.3月 | 6,291,499 | 5,221,746 | 6,062,700 |
H29.3月 | 6,977,277 | 5,854,775 | |
(住宅向け除く) |
これによると貸金業の信用保証の残高は増え続け、さらに貸金業の本業であるはずの直接融資の残高を逆転しています。
三菱東京UFJ銀行のカードローンならグループのアコムが保証業務を行っています。
カードローンの商品説明には「年齢が満20歳以上65歳未満の国内に居住する個人のお客さまで、保証会社(アコム㈱)の保証を受けられるお客さま。」と記載されています。
三井住友銀行カードローンなら同じくグループのSMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス)が保証提携。
みずほ銀行カードローンなら同じくグループのオリエントコーポレーション(オリコ)が保証提携。
この形が完全に出来上がっています。
全国の地方銀行や信用金庫も同様です。
特にメガバンクの場合、グループのノンバンクに委託するため、連結で財務を見ると実質的にリスクをグループ内で分け合っています。
子会社のノンバンクの保証会社は自社で直接融資する場合は貸金業法を、親である銀行の融資の保証をする場合は親の言いなりにと、これではそれぞれの責任所在があいまいになり、融資姿勢が緩んでいるとの指摘があります。
背景にあるのは規制が厳しくなった貸金業法の”抜け穴です。
ノンバンクは貸出上限に「年収の3分の1まで」という総量規制が適用されるが、銀行には適用されない。
貸金業者は総量規制で直接貸し出しできなくても、銀行が貸せば金利のうちの何%かは保証料としてもらえるわけです。
実際年収の3分の1を超えて融資する銀行は少なくありません。
収入証明を取らない銀行も多くありました。
そうです、仮に借り手が延滞をしても、保証しているノンバンクが面倒をみるから銀行は痛くも痒くもない。
銀行に面倒な取り立て業務も発生しないし、貸倒は発生しないのです。
保証会社のノンバンクが保証履行してくれて後のことはすべてノンバンクがするから。
金融庁の調査ではノンバンクで希望通り借りられなかった人の1割弱が、その後銀行カードローンでお金を借り入れできたそうです
カードローンの融資審査は銀行と保証会社が行う建前になっていますが、実際には保証会社が行って銀行は審査していないに等しいでしょう。
銀行本来の企業融資が増えず、低金利時代で金利収入も見込めない中、ノンバンク・貸金業者がやっていた個人向け融資は高い金利も取れるし、ノンバンクが保証するからリスクもない。
ノンバンク側も保証料が取れる。
銀行の団体である全国銀行協会(全銀協)は2017年3月「銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせ」を発表、過剰な広告の自粛や返済能力のチェック強化などを進める方針で一致したようです。
超低金利下でも年利10%を超えるカードローンは銀行・信用金庫、ノンバンク貸金業者双方にとって魅力的な市場です。
お互い味をしめ、相当膨大な市場となっていますので、現状が簡単に変わることはなさそうです。