銀行や信用金庫の個人向けカードローンの融資残高が急増し、過剰融資、多重債務を懸念する声が強まってきています。
銀行だから金利が低いわけでもなく、消費者金融並みの金利である一方、貸金業法で定められた年収の1/3という融資額の制限(総量規制)が適用されず、銀行のカードローンが多重債務対策の抜け道になっているといわれています。
貸金業法の貸金業者の個人向け無担保ローン(消費者金融)の残高を、銀行・信金カードローンの残高が超えてきているのです。
下表のとおり、銀行・信用金庫のカードローンの残高は、貸金業法改正で貸金業者に「年収3分の1まで」との総量規制が導入された2010年6月以降、急速に増加している現実が数字からもわかります。
特に日銀の低金利政策、大規模金融緩和の中、収益基盤が揺らいできた銀行・信用金庫が高い金利を得られるカードローンを軒並み強化、宣伝にも力を入れ、一部地銀にとっては主力商品に成長したのです。
銀行のなりふり構わぬカードローン融資の姿勢に「新たな多重債務の温床」であると批判が強まり、日本弁護士連合会は、2016年9月、「借り手保護の観点から、銀行カードローンも総量規制すべきだ」との意見書を公表しました。
時同じくするように2016年の自己破産申立件数は前年比1.2%増の約6万4600件で13年ぶりに増加に転じています。
銀行カードローンに対して日弁連や消費者団体などから批判が相次ぎ、国会でも取り上げられる中で、銀行の団体である全国銀行協会(全銀協)は2017年3月「銀行による消費者向け貸付けに係る申し合わせ」を発表しました。
これは銀行カードローンの収入審査、総ローン残高審査の強化を各銀行の裁量でおこなうというもの。
「自主規制でどこまで効果があがるのか」と厳しい視線が注がれています。
<銀行・信金カードローンと貸金業の消費者向け無担保融資残高 推移・比較>
日銀統計のカードローン等残高(銀行+信金)
金融庁の貸金業関係資料集 貸金業の消費者向け無担保融資残高
単位:億円 | 貸金業者 消費者向無担保残高 |
銀行・信金 カードローン等残高 |
H16.3月 | 168,772 | 44,412 |
H17.3月 | 170,094 | 42,001 |
H18.3月 | 176,399 | 41,211 |
H19.3月 | 172,651 | 39,446 |
H20.3月 | 153,695 | 38,739 |
H21.3月 | 132,699 | 38,394 |
H22.3月 | 107,207 | 37,637 |
H23.3月 | 77,055 | 37,736 |
H24.3月 | 61,185 | 39,589 |
H25.3月 | 51,183 | 44,572 |
H26.3月 | 46,965 | 49,813 |
H27.3月 | 44,837 | 55,148 |
H28.3月 | 44,438 | 60,266 |